コラム

ファシリテーターの役割とは何か?

2017.05.23

会議やミーティングの場面で、今や普通に使われるようになった、
「ファシリテーション」や「ファシリテーター」という言葉。
ファシリテーターが何をする人かなんとなく理解している人は多いと思います。

今日はファシリテーターが具体的にどんな役割を担っているのかを考えてみます。

ファシリテーターとは何をする人か?

ファシリテーターを一言で表現すると、
「会議のサポーター」だと言えます。

では、具体的に何をサポートするかというと、

「立場の異なる複数の人たちが集まる会議やミーティングの場で、
・ 会議の場を整え
・ 出席者全員の考えを引き出し、受けとめ
・ 議論の流れを整理しつつ
・ 出席者の感情にも配慮しながら
・ 適切な結論に至る
プロセス全体をサポートする」

それが、ファシリテーターの役割です。

会議にファシリテーターが必要な理由

なぜ会議にファシリテーターが必要なのでしょうか。
その理由は2つあります。

① 当事者たちだけで議論しても意見や結論が偏る可能性があるから
② 本来話すべき議題とはズレた議論に陥る可能性があるから

① 当事者たちだけで議論しても意見や結論が偏る可能性がある

会議はある議題に対しての当事者たちの集まりです。
言い換えると利害の対立がありえる人たちの集まりです。
それぞれの出席者は、
自分の立場から自分の意見を主張するために会議に参加しています。
自分の意見を主張することに抵抗がない人は、
どんどん発言します。
一方、意見はあるものの大勢の前で発言するのが苦手な人は、
何も言えないこともあります。
そういう人は、声の大きい人たちを前に黙るしかありません。
その結果、声の大きい人の意見が通り、
合意形成とは言い難い結論に落ち着く可能性があります。

② 本来話すべき議題とはズレた議論に陥る可能性がある

会議の議題を踏まえて議論を始めたものの、議論が白熱してくると脱線が始まります。
会議の議題(=問い、論点)の答えになっていない意見や、ただの愚痴に近い話など、
「あれ?そもそも何の話をしてたんだっけ?」
と誰もがポカンとしてしまう状況は良く見られますよね。

そうした状況に陥らないよう、ファシリテーターが会議をサポートする必要があります。

ファリシテーターの役割

ここでは、ファシリテーターの特に重要な3つの役割、

・ 出席者全員の考えを引き出し、受けとめる
・ 議論の流れを整理する
・ 出席者の感情に配慮する

に絞って説明します。

「場を整える」、「適切な結論に至る」については、別の機会に詳しく考える予定です。

① 出席者全員の考えを引き出し、受けとめる

会議の出席者は、
「他の出席者の話を聴こう」と思って会議に臨むというよりも
「自分の意見を言おう」という動機付けで会議に参加していることが多いはずです。

自分の意見を言いたい人というのは、一般的に「自分の話をしっかり聴いてほしい」
という欲求が強い傾向にあります。
ただ、この手の人が発言すると、周りは
「またあの人の独演会が始まっちゃったよ。早く終わらないかな」
という冷めた反応をしがちで、
ますます発言者をヒートアップさせる結果になってしまいます。

そこでファシリテーターの出番です。
全ての出席者の発言をしっかり受けとめる、
つまり「傾聴する」ことで発言者に
「聴いてもらえた」という感触を得てもらうことが、
ファシリテーターの大きな役割です。

一方、
「他の出席者の話を聴きに来たわけではないけれど、
自分の考えを人前で説明するのは苦手だから黙ってしまう」
という出席者もいます。

出席者は、なるべく自分の発言の機会を確保したいはずなので、
黙っている出席者に対する配慮を見せることは少なくなります。
結果、誰からも意見を求められないまま会議が終わる、
という出席者が出てしまいます。

こうした事態にならないよう、ファシリテーターは全ての出席者に意見を求めます。
特に、黙りがちな人から発言を引き出すのはとても難しい作業です。
その際に重要となるのが「質問する力」です。

質問する力については、別の機会に詳しく解説しますね。

② 議論の流れを整理する

会議やミーティングで議論が白熱してくると、話の脱線が起きます。
論点がズレる、という現象です。
とはいえ、脱線しないように気を付けて議論を進めようとすると、
そのことに気が行ってしまい、目の前の議論に集中できない可能性があります。
そこで、ファシリテーターが出席者の議論の流れを捉えて、
仮に論点が大きくずれてしまったようなときには、
適宜指摘をする役割を担います。

例えば、
「皆さん、今何について答えを出そうと議論していたのでしたっけ?」、
「もともとは〇〇の件について議論していたのでしたよね?
いったん話をそこに戻しませんか?」
などと促すのです。

このようにファシリテーターが議論の流れを捉え、整理する役割を担うことで、
他の出席者は安心して目の前の議論に集中することができます。

③ 出席者の感情にも配慮する

会議やミーティングに限らず、コミュニケーションで難しいのは、
「正論で人は動かない」
という事実です。

誰かの意見が「論理的に正しい」とアタマで理解できても、
何かモヤモヤすることがあるのが私たちの特性と言えます。
その「モヤモヤ」が何かというと、
多くの場合「感情的に納得できない」という状態なのだと思うのです。

「彼の意見は正しいかもしれないけど、あんな言い方しなくてもいいのに」
とか、
「一般的にはその通りかもしれないけど、うちの部門の業務は特殊だから、彼女が言うほど簡単には解決しないよ」
といった気持ちが湧いてくる場合、感情的に納得できていない可能性があります。

感情的に納得できないとどんなことが起きるかというと、次の2つです。

・ なかなか合意形成に至らない(議論が平行線…)
・ 仮に結論を出したとしてもその後のアクションに前向きになれない

もちろん、出席者がお互いに感情に配慮した発言をすれば良いのですが、
特に何かを決めなくてはいけないような会議では、
どうしても論理的な説明が先行しますし、
何より自分の意見を通したいという思いが強くなるのは避けられません。
そこで、ファシリテーターが、出席者の感情にも気を配り、
合意形成に至るプロセスをサポートすることが期待されるのです。

いかがでしたか?
ファシリテーターが会議で果たす役割は、意外と大きいと感じたのではないかと思います。

「まだファシリテーターを務めたことがない」、
「うちの会社ではファシリテーターを置いて会議することはない」
という方も、ぜひ一度会議でファシリテーターを担当してみることをおすすめします。
きっと、今まで以上の議論ができるはずです。

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