コラム

問題を疑うことの重要性

2023.08.01

以前のコラムで、問題解決をするとき、最初に考えるべきことは、解決策を考えることではなく、解決すべき問題を設定することの方が重要であると書きました。

今回は、問題の設定について少し掘り下げてみます。

まず、その前に「問題」の定義を明確にしておくと

「問題とはあるべき姿(ありたい姿)と現状のギャップである」と言えます。

なので

解決する必要のある問題が起きたときや、問題解決を依頼されたとき

「ここで『問題』と言っていることが本当に解決すべき問題なのか?」
「本当の問題はもっと別にあるのではないか?」

と疑ってみることが大事な理由は

目の前の問題は、あくまでも「現状」であり、「そもそもどうなっている状態が理想なのか?」を考えずに問題解決しようとすることが最大の問題だからです。

「そもそもどうなっている状態が理想なのか?」についてしっかり考えて、現状とのギャップを埋めるために必要なのが抽象度を上げること

「抽象度を上げる」とは、具体的な事象や詳細から一歩引いて、より広い視野で物事を考えることを指します。

個々の事象を個別に考えるのではなく、それらがどのように関連し、全体としてどのような意味を持つのかを俯瞰して理解するには欠かせないプロセスであり、本質的な問題解決を行うための最重要ポイントと言っても過言ではありません。

具体と抽象

抽象度を上げることで、問題の本質(原因)を見つけ、より効果的な解決策を見つけ出すことが可能になるからこそ、まず目の前の問題を疑うという態度が大事になるのです。

ここまで、抽象度を上げることの重要性について書きましたが、もう少し正確に書くと、抽象度を上げたり下げたりする、つまり具体と抽象を行き来する思考こそが、本質的な問題解決には欠かせません。

目の前にある事象を具体的レベルでしっかりと認識した上で、(抽象度を上げて)俯瞰して見ることでパターン認識やメタ認知を通して本質的な問題の抽出をした後は、再び抽象度を下げることによって具体的な解決策として言語化する必要があるからです。

具体的な思考が問題の詳細を理解するのに役立つ一方で、抽象的な思考は問題の全体像を理解し、本質的な解決策を見つけるのに役立つ、つまりバランスが大事ということ。

なぜ?を繰り返すよりも大切なこと

ここまで読まれた方は、「なぜなぜ分析」を思い浮かべた方もおられるかもしれません。

「なぜを5回繰り返せば真の原因に行きつく」という製造業ではかなり有名な言葉です。

この言葉(フレームワーク)自体は間違いではありませんが、問題や前提を疑うという視点から考えると少し問題があります。

それは、5回繰り返すという部分。

5回というわかりやすい「数字」から、5回繰り返すことが目的になって、思考停止してしまう危険性があるからです。

問題や状況によっては5回以上繰り返さないと真の原因に達することができないのに、5回で「わかった気になる」と本質的な問題解決はできません。

また、「なぜ?」という問いは「単純な原因追及」にフォーカスしがちで、有り体に言えば「犯人探し」に終始してしまい、「根本原因は人為的ミス」のような本質からずれた問題解決にミスリードしてしまう可能性も孕んでいます。

ではどうすればいいのか?

この場合、「Whyを繰り返す」と考えると抽象度を上げることができます。

どういうことかと言うと、Whyの日本語訳を「なぜ?」から「なんのために?」と置き換えて考えるということ。

「そもそもなんのために?」「あるべき姿とは?」という目的思考で考えることで、全体を俯瞰して眺められるようなり、本質的な問題解決に近づくことができるようになります。

以上を踏まえて、事例として解説してみましょう。

事例

例えば、あるIT企業が、「顧客からのクレーム対応に時間がかかりすぎる」という問題に直面していたとします。

この問題は「時間がかかりすぎること」と捉えると「クレーム対応のスピードを上げる」ことで解決すると考えるかもしれません。

しかし、あるべき姿や具体と抽象を意識して考えると、

「それの何が問題なのか?」(クレームに時間がかかることの何が問題なのか?)
「本来クレーム対応は何分で終えるべきものなのか?」
「1日に何件のクレーム対応を行うことが望ましいのか?」
「クレーム対応が目標時間内に終われば、それで問題は解決するのか?」
→(他に解決すべき問題、例えば品質要件などはないか?あるとしたら何か?)

という思考から、問題の本質(原因)は「顧客満足度の低下」であり、それは「プロダクトやサービスの品質向上を行う」ことで解決できるのではないかという仮説が浮かび上がります。

また別の事例として、製造業の企業が「生産効率の低下」という問題に直面していたとします。

この問題解決を「生産効率の向上」と捉えると「生産ラインの改善」や「新たな機械の導入」などで解決すると考えるかもしれません。

しかし、あるべき姿や具体と抽象を意識して考えると、

「それの何が問題なのか?」(生産効率の低下の何が問題なのか?)
「理想的な生産効率を数値化するとどうなるのか?」
「生産効率とは何がどの程度下がっていることを言っているのか?」
(生産効率を決定づける要素は何か?)
「生産効率が向上することで問題は解決するのか?」

と考えてみることで、問題の本質は「生産プロセス全体の最適化」であり、それは「生産ラインだけでなく、供給チェーンや物流も含めた全体的な見直し」を行わないと本質的な問題解決にならないという結論になるかもしれません。

以上、わかりやすく説明するために「事例」として書いてみましたが、あるべき姿や具体と抽象を意識して考えることについてのイメージは伝わったでしょうか?

弊社の問題解決ワークショップでは問題解決を行うためのスキルはもちろん、スキルを活用する前のマインドセットに時間を割くことで、あるべき姿を明確にする目的思考や具体と抽象を行き来する思考を身につけていただき、自分で本質的な問題解決できる人材を育成することをゴールにしています。

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