コラム

「新人がイノベーションを考える」研修を実施しました

2018.05.24

2018年4月、新しい研修を実施しました。
それは、「もしも新人の私たちがイノベーションを考えたら?」というタイトルの研修。
通称「もしイノ」。
7年ほど研修でお世話になっている、とある大手情報通信機器メーカーでの研修です。

この会社では、今年から新人研修の大改革を行い、
「どんなことでも目的を理解し」
「当事者意識を持って仕事ができる」
人材を育成することに的を絞った研修体系を構築しました。

その目玉が、この「イノベーション研修」。
全5日間のプログラムでした。

今回は、このプログラムの概要、プログラム中に起きたこと、実施を終えた感想をお伝えします。

イノベーション研修の概要

対象

大手情報通信機器メーカーグループの新入社員、約140人

研修の目的

①「夢」や「理想」から発想する
②リミッターを外して、「考える」、「コミュニケーションする」、「行動する」
③ワクワクすることを考える

テーマ

6つの社会課題(少子高齢化、環境問題、都市集中、災害・テロなど)からチームで1つテーマを選択し、選んだテーマから具体的にイノベーションを考える。

5日間の内容

1日目
キックオフ、テーマ選定とマスタースケジュール策定

2日目
チームで決めたスケジュールに沿って活動、上司報告

3日目
AM:ゲストとのトークセッション、
PM:チーム活動、上司報告

4日目
チームで決めたスケジュールに沿って活動(成果物作成がメイン)

5日目
AM:6チーム対抗プレゼン×4クラス
PM:上位4チームによる最終プレゼン、振り返り

ゲストとのトークセッション

3日目の午前中には、外部ゲスト2名を招いてのトークセッション。
新たな観点で事業を立ち上げた経験のある方の話を聴いてもらうことで、
「発想の幅を広げること」
「外部の方の話を聴くことが習慣化すること」
「何かを生み出したい、という気持ちを強くしてもらうこと」
をねらって企画しました。

ひとりは、家業を上場に導いた後、プロ経営者としてIT企業の社長をしているコンサル会社時代の後輩、
もうひとりは、シリアルアントレプレナーとして活躍し、
現在都市型ユースホステルの運営をしている友人にお越しいただきました。

「新たなアイデアを実現させるためには、
いきなり大きなことを考えるのではなく、
身近な誰かをイメージして、
その人がどうしたら喜ぶのかを考えることが一番大切。」

「リスクはあって当たり前。
何がリスクかを見極めて、
どう対処するかを考えられるレベルにまで分解すると、
それはもはやリスクではなく課題になる。
つまり解決可能ということ。」

「何もしないことが一番のリスク。」

など、彼らの話だけで一冊本ができ上がるんじゃないかというぐらい、濃い話を聴かせてもらいました。

イノベーション研修で起きたこと・感じたこと

ありえないぐらい真剣に取り組む新人たち

事務局の皆さんと事前に心配していたのは、
「みんな真剣に考えるのだろうか?」
ということでした。
誰かが適当にアイデアを思いついて、それをササっとまとめる程度になるのではないか、という不安です。
この予想は、まるっきり裏切られました。
最後の最後まで、
「もっと良いアイデアはないか?」
「どうしたらもっと良いサービスになるか?」
「どんな伝え方をしたら、聴き手を惹き込めるか?」
を全員で考え抜いていました。

目的や目標から考えることで、手段は自ずと磨かれる

なぜこれほどまでに真剣に取り組んだのか、僕らなりに分析したのですが、
それは
「ヴィジョン(作り出したいもの)を自分たちで考える喜び」
が大きかったのではないかと見ています。

自分たちで決めた「ヴィジョン(目標)」なので、
より良くしたい、
他のチームに負けたくない、
みんなに聴いてほしい、
という気持ちが強くなったのでしょう。

しかも、研修後の振り返りで
「ミーティングでみんなに自分の意見を聴いてもらうためには、簡潔に言うことが必要だと感じた」

「リアルにイメージできないようなフィールドで発想しても
すぐにアイデアが行き詰ってしまったけど、
身近なところから発想することでどんどんアイデアが広がった」

「先に制約があるところから考えるのは窮屈だと感じたが、
実際には制約があるところから考えるからこそ新たな発想が生まれる」

「どんな伝え方をしたら、
自分たちが伝えたいことが十分に伝わるか考え抜いた結果、
プレゼンテーションのストーリーが大事だということに気づいた」

と言ったような、中堅社員の研修でもなかなか出てこないような気づきを得ていることに驚きました。

こうした気づきを意図的に持ってもらうために、
「ロジカルシンキング」、
「クリエイティブシンキング」、
「ミーティングファシリテーション」、
「プレゼンテーション」
などの研修を実施している僕としては、
何も教えていないのにこれほどの気づきを得ている彼らを、心から尊敬しました。

新人だからと言って、甘く見ていた自分が恥ずかしくなりました。
誰だって学ぶ力を持ってるんですね。
それをあらためて痛感しました。

ユニークな着想

事前の予想では、
「新人が斬新なアイデアを生み出すのは難しいのではないか?」
という声もありましたが、
実際は僕らでは見過ごしてしまうような
「身近な課題」を取り上げているチームが多かったことに驚きました。

本当は、このコラムでいくつか具体例をご紹介したいぐらいです。

もちろん、5日間という(細かいところまで詰めるには)短い期間だったので、
解決策(商品やサービスを企画すること)そのものは洗練の余地がありますが、
「課題」、
つまり
「何に困っているのか?」
を捉えきった彼らの視点を、今後も持ち続けてほしいと感じています。

5日間の研修だからこそ、それぞれの「らしさ」が現れる

5日間、毎日同じメンバーで同じテーマを追いかけた結果、
ひとりひとりに、そしてそれぞれの関係の中で様々なことが生じていたようです。

初日議論をリードしていた子が、途中で息切れしてしまったり。
最初は斜に構えていた子が、4日目に目の色が変わっていたり。
リーダーシップを発揮しすぎて、みんながついていけなくなったり。
ずっと黙って見守っていた子が、チームの流れを変える一言発してみたり。
みんなの意見をまとめられない、と、悔し涙を流す子が出てきたり。
最初は対立していた2人が、最後は最強コンビになっていたり…

ある一定期間集中して共に時間を過ごすことで、
アイデアを形にすることだけでなく
それぞれの受講者の考え方やコミュニケーションのしかたにも大きな変化が起きたこと、
これも貴重な発見でした。

新人だけでなくすべてのビジネスパーソンにすすめたい

今回、僕たちの一番の収穫は、
「人には自ら気づく力がある」
「そのためには目的・目標から考えることが必須である」
「チームで考え抜くことで、1人では思いつかないような発想が出てくる」
ことを改めて実感したことです。

こうしたことは、何も新人に限らず
全てのビジネスパーソンに起き得ることだとも確信しています。

5日間まとまった時間を取ることは現実的に難しいのかもしれませんが、
それだけの投資をする価値のある時間だった、と僕たちは感じています。

このような貴重な機会をくださったクライアントの皆さん、
そして、5日間僕の細かな突っ込みにも負けずに考え抜いた
新人の皆さんに心からの感謝を伝えたいです。

ありがとうございました。

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