論理VS直感
2023.07.26
今回は、論理と直感という、一見相反する概念について書いてみます。
結論から書くと、問題解決には論理的思考だけでなく直感も重要ということ。
どちらかに偏ることなく補完し合うことで、より精度の高い問題解決を行うことが可能になるからです。
日頃、問題解決ワークショップやロジカルシンキング研修などを行なっていると、「(妥当な解を導くためには)論理的に考えなければいけない」と思い込んでいる方がおられます。
また、「ビジネスの重要な課題を直感で解決するなんて不謹慎だ」と感じる方もおられるかもしれません。
もちろん、直感に頼ることなく、論理的思考やフレームワークに当てはめることで問題解決を行うことは可能ですが、(ある意味)誰にでもできることであり、イノベーティブな解決策は期待しにくいということでもあります。
論理的思考やフレームワークに当てはめて答えを出すことは、生成AIが最も得意なことなので、生成AIを使用されたことのある方なら、「よくできているけど面白みのない回答」がイメージできるのではないでしょうか?
直感とは?
では、改めて直感について考えてみましょう。
直感とは、一般的には、明確な理由や論理的な思考過程を経ずに、瞬時に何かを理解したり、決定したりする能力のこと。
具体的な証拠に基づかない知識や理解の形式のため、ビジネスシーンでは重要視されないという側面がありますが、イノベーティブなプロダクトやビジネスモデルは誰かの直感から生まれているケースが多いという事実も見逃せません。
問題解決においては、生成AIが膨大なデータから解答を出すのとは違い、そもそも情報が少ない、時間やリソースが限られている、未知の領域で既知のパターンが適用できないといった局面で役に立ちます。
直感が使える場面
直感は、解決策を考える時にも有効ですが、実は「問題を定義する」、「原因を究明する」時にも使えます。
問題とは「ありたい姿」と「現状」のギャップと言われたりしますが、ありたい姿というのは論理的に導かれるものではなく、自分の意思が強く反映されるもの。
ありたい姿を描く時には、演繹的な思考を重ねるのではなく、自分の直感(どちらかというと直観かもしれませんが)を信じることが重要になります。
また、原因を特定するには複数の原因仮説を洗い出す必要がありますが、その中から「これ!」という原因を見出すのは、地道な検証作業だけでなく、自分の直観を頼りにすることも大いにあり得るはずです。
直感の鍛え方
論理的思考については、それこそ論理的に学ぶ方法がありますが、無意識に発動する直感を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか?
まず、直感は、過去の経験や知識に大きく依存することから考えると、経験や知識を増やすことが重要になります。
ただし、似たような経験や知識を積み重ねても直感は鍛えられません。
リスクを取って、新しいことにチャレンジすることで、新しいパターン認識能力が身につくのです。
これは前回の「問題解決力を高めるために必要なこと」に書いた「好奇心を持つこと」にも通じますが、日常生活や仕事を行う上で、「いつもと違うことをする」を意識するだけでもずいぶん違います。
そこで大事なのが、失敗すること。
とはいえ、大きな失敗を勧めているわけではなく
・外観の雰囲気で「良さそう」と思って入ったお店がそうでもなかった。
・タイトルに惹かれて観た映画が面白くなかった。
といった、低リスクの失敗でかまいません。
そんな、小さな失敗を繰り返すことで、パターン認識の精度が高まり、直感が鍛えられるのです。
論理的思考に偏ると、リスクマネジメントを考えすぎて本質的な問題解決から遠ざかってしまうということが起こりがちですが、それを回避するためにもぜひ意識してみてください。
また、創造力や想像力を育む活動も直感を鍛えることに役立ちます。
・ビジネス書よりも小説を読んでみる。
・下手でもいいから絵を描いてみる。
・気になった風景を写真に撮ってみる。
・自然の中を散歩してみる。
・料理を作ってみる。
・パズルやボードゲームをしてみる。
こうして並べてみると、仕事と関係ない、それこそ役に立たないと思われそうなことばかりですが、知識や情報量では生成AIに勝てない時代だからこそ重要になるのです。
終わりに
最初に書いたように、論理と直感は対立するものではなく補完し合うものです。
論理的思考がなければ、私たちの行動は計画性を欠き、結果を予測することが難しくなります。
また、直感がなければ、私たちは固定のパターンやルールに縛られ、新しい可能性を見つけることができません。
今後、ますます複雑化していくことが予想されるビジネスにおける問題解決には、二つの能力をバランスよく使うことできる人材が求められることになるでしょう。
弊社の問題解決ワークショップでは、スキルや知識だけでなく、マインドも含めてバランスよく身につけていただけるようなプログラムを行なっています。