DXが成功しない本当の理由3選―経営者・担当者が押さえておきたいこと
2023.02.22
「DXが進まない」―
当社にもよくそのようなお悩みが寄せられます。
なぜDXが推進できないのか、正しく分析・理解していますか?
今回はDXが成功しない根本原因は、以下の3つに分けられます。
・“DX”の意味を履き違えていること
・資源の不足
・手段の目的化
今回は、上記3点と正しい現状分析のポイントをお伝えします。経営者・CxO、DX推進担当者、経営企画担当者の方はぜひご覧ください。
“DX”の意味を履き違えていること
DX(Digital Transformation;デジタルトランスフォーメーション)という言葉が一見浸透しているようにみえて、実は意味を誤認しているケースもあります。
「レシートの紙保管をやめて、データで保存しよう」
「アプリからの注文ができるようにしたら、顧客層が広がるなぁ」
これらはDXではありません。
まずはDXの意味を確認しましょう。
DXの定義
経済産業省は、DXを次のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。 |
つまり、DXとは、「アナログをデジタルに置き換える」ことや「デジタル技術を用いたビジネスを始める」ことではなく、組織全体をデジタルの力で変革し、組織のあり方そのものを変え、新たな価値を創り出すことなのです。
デジタルツールの導入や利活用が進まないことで頭を抱える経営者も多いのですが、まずここに立ち戻る必要もあるでしょう。
DXのステップ
DXには3つの段階があると言われています。
1. デジタイゼーション
2. デジタライゼーション
3. デジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタイゼーションとは、いわば「アナログデータのデジタル化」です。
紙で保管されていたものをデジタル化する、会議の様子を録画してそのまま保存することなどが含まれます。すべてアナログ処理するよりも所要時間が減ったり、保管場所が削減できたりする効果があります。
次は「デジタル処理を組み合わせると良さそうだ」という発想に至ります。ここで出てくるのがデジタライゼーションです。
デジタライゼーションとは、「業務プロセスのデジタル化」です。
ECサイトによる売買、生産管理システムのオートメーション化、勤怠・採用管理システムの導入などが含まれます。アナログデータをデジタルにしたことで、業務の流れ全体もデジタルによって変えられるからこそできることなのです。
組織内の複数の場所でデジタライゼーションが起こると、組織全体にも新たなチャンスが生まれます。ここではじめてDXの登場です。
デジタルの力であらゆる業務や商品・サービスが変化を遂げたことで、組織が社会に提供できる価値が変化します。
DXの具体例
DXとは具体的にどのようなことなのか、架空の例で考えてみましょう。
職業:地方の町A町のレタス生産者 悩み:跡継ぎの不足(A町全体で不足)、収益の不足 跡継ぎ不足の理由:移住や就農希望者はいるが、一定期間ののち離職してしまうため 収益不足の理由:気象条件の予測や生産調整が難しく収穫量が安定しないから、生産者の高齢化による体力不足で生産する量を減らしているから |
専用のツールを導入して生産に関するデータを集め、生産や販売方法にもデジタル技術を用い、生産効率を改善させ、町ぐるみの人材募集や宣伝をオンラインで行い、人材が集まるかもしれません。
それだけではDXではありません。
たとえば、引き続き生産に取り組む中で「廃棄量の減少」「生産や出荷における有害物質排出量の削減」など、SDGsにも貢献することが出てきたり、荒れ地や休耕地の利活用ができたりすることで、社会に新たな価値を提供し、DXが実現できたことになります。
資源の不足
DXに必要な経営資源が不足していることも、DXが推進できない原因に挙げられます。
特にアナログ依存の傾向が強い企業では、システム導入や費用の面で問題を感じることがあるかもしれませんが、取り組む時間や人材の不足も大きな要素です。実のところ、どのくらいDXに資源を割くのかという経営判断が大きい部分です。
ここでは、
・費用や設備の不足
・時間の不足
・人材不足
について解説します。
費用や設備の不足
DXに充てる費用や、デジタルツール、パソコンやネットワークなどの不足が第一に思い浮かぶ方は少なくないでしょう。
しかし、費用を増やし、ツールを導入すれば問題が解決するものではありません。費用やツールをどれだけ利活用できるかにかかっているからです。
したがって、必要な費用を試算し、どのような設備投資を行うのか計画できる人材をおき、計画立てて動ける体制づくりを先に行うことをお勧めします。
時間の不足
DXに取り組む時間に関しては、経営者自身がどれだけ本気でDXに取り組むのかにかかっています。
DXを「ながら」で行うのか、経営計画における重要な位置に据えて本腰を入れて取り組むのでは訳が違います。時間が足りず進まないと考える場合は、担当者に時間的猶予を与える必要があるでしょう。
しかし、時間がどれだけ必要なのかも皆目見当がつかないということもあるかもしれません。
そのような場合は、計画力を持った人物に一任するのが望ましいでしょう。
人材不足
費用や設備投資を含む計画を立てる面からも、鍵を握るのは担当者です。適任となる人物をおくようにしましょう。
「デジタルに詳しい人がいないから無理だ」と思われるかもしれませんが、デジタル分野の技術職が必要なものではありません。
DX推進の場面で求められるのは、視野を広く持ち、組織の目指す未来に向けて正しい課題抽出ができ、問題解決できる力です。
問題解決できる人物を正しく見定めて抜擢する必要がありますし、先に人材育成を行うほうがよい場合もあります。
手段の目的化
DXはあくまで新たな価値創造により収益を上げ続け、企業の永続性を高める一手段にすぎませんが、DXが経営の目的になってしまっているケースにもよく出会います。
「DXをすればうまくいく」ということはありません。DXにより生み出された価値を活かし続けることができなければ、DXを推し進める意味はないのです。
そもそも組織の存在意義は何なのか、現在提供できるものや資源は何なのかを洗い出し、整理し、経営計画を立てるところがスタートです。
DXに関する各種認定や補助金の存在から、「DXをしなければならない」という気持ちになることがあるかもしれませんが、DXは義務ではなく、組織が伸び続けるための施策として位置づけ、取り組むものです。
抽象的で考えにくいと思ったときの解決策
経営計画から落とし込んでいくことが難しいと感じる場合は、特定の問題を取り上げて想像してみることもお勧めです。
感染症の拡大で「出勤できない」事態に備える方法はコロナ禍で随分経験した方がいると思いますが、ほかにも次のようなことが考えられるでしょう。
・商品の材料が不足する場合
・属人化している業務の担当者がいなくなった場合
・災害が起きた場合
具体的に取り組むならば、BCPの作成などを通じて経営計画を見直すきっかけをつかめることもあります。くれぐれもDXのことだけを考えるのではなく、組織全体を俯瞰し、経営計画に落とし込む形で検討しましょう。
DXのハブになる人を育てよう
DXの成功には、経営を最適化し続け、組織の持続可能性を高めるための取り組みが不可欠です。DXは経営推進の一手段にほかならないからです。
組織全体を見直し、その時々で必要な問題解決をすることで、結果的にDXが進むだけでなく、利益を安定的に生み出せるようになるでしょう。
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